サブカル 語る。

サブカルチャーなどについての雑談

「コラアゲンはいごうまん」の本を読んで、多様性について考えてみた。

こんにちは。
 先週末から土日にかけて、会社出張で東京を離れていました。その出張先に向かう道中の電車で読む退屈しのぎで買ったこの本。

  

 

 やっぱりというか、これめちゃくちゃおもしろい!僕のブログの古い常連さん(古いといってもブログ3年めだけど)は僕が中学生の頃にワハハ本舗の社長兼演出を務めている「喰始」さんとお会いした事で、半年ほど物語やギャグの作り方を直接ご指導いただいたことをご存知でしょう。プロにはならなかった僕だけど、同じお笑い界の大御所の薫陶を受けている人という意味で、この芸人さんに僕は注目していました。

 この芸人さんのトーク喰さんやファンの掲げるテーマに則した事象を取材して、その体験を漫談にして語るという独特なもの。 

①SM女王の奴隷募集試験を受けてみる。
後期高齢者がソープ嬢として働いている風俗へ行く。
③食べ放題なのに食べ過ぎると怒られるケーキ屋のお話。
④「全国穴掘り大会」なる珍妙な大会に参加して練習中に「不発弾」を掘り出した話。

こんな具合のエピソードが本には29本収録されております。 

 さて、このコラアゲンはいごうまんさんですが、この独特な芸風を誕生させたお話もまた、ユニークなものです。大阪でどんな芸をやっても芽が出ず悩んでいたコラアゲンさんは14年前に上京。ワハハ本舗に加わって、ネタを喰始さんに何度も見せたもののほめられた事も殆どなく、ついに最後には喰始さんから「あなたはネタを考える才能がない」と、芸人にトドメを指すような通告を受けることに。その時に芸歴15年を数えていたコラアゲンさんは、もうどん底に叩き落とされて号泣したそうな。ただ、喰始さんは同時にひとつのアドバイスもコラアゲンさんに与えていました。

「ネタづくりができないんだったら自分の体験談を語ってみるといい。無理やりに作ってたネタより、自分の体験から生じた素直な言葉こそお客さんに響く。きっと笑いを生む」

 このアドバイスをルーツにコラアゲンさんは日本各地を回って、全国の「何コレ?」を取材。それを漫談にする芸風を確立させたそうです。そのネタのどれもがゲラゲラ笑える「ファニーという意味のおもしろさ」と「え?そうなの?それほんとに知らなかった」という知識欲をかきたてられるおもしろさを同居させた知的なお笑いなのだけど、その芸風ゆえテレビ露出はマジで少ない。こんなにおもしろい素材があるのにも関わらず、そこに触手を積極的に伸ばさないテレビってほんとうにもったいないしつまらないと思うのです。また、同時にこの芸人さんの笑いは現在のこの国に
足りないものが何なのかを僕に訴えかけてきたりもします。その「足りないもの」というのは自分の未知のモノに対して「なるほどなぁ」とつぶやける視座と心の余裕じゃないのかと思うのです。

 そもそも「笑い」とは一体何か?それをだれかに問われたら中学生の頃、喰さんに直接その基本を教わり、社会人経験を積んだ自分としては「笑いとは自分の生活に根ざした価値観と他者とのギャップである」と答えます。人間っていうのは生活を通じた経験から「こうすればこうなる」といった文法を発見して、それを元に価値観を作り、日常の生活に反映させます。もしそこに、自分のものと異なってい奇妙な価値観が現れたらどうなるか?その時の対応はたぶん、この3つになるでしょう。

①価値観を守るため、徹底的に反発する。排除する。
②自分の持つ考えと異なるが、それもアリとある程度の理解を示す努力をする
③無視

 コラアゲンさんはマジョリティーの立場にいる人たちから見て「何コレ?」な人とモノを題材に笑いを作りますけど、ソレは①に基づいた排除、嘲りなどの笑いではありません。漫談や本には本人の「なんでやねん!」という叫びが感じられますけれど、それは異物との対話を「もうええわ」と打ち切る「なんでやねん!」じゃなく「なんであなたはそんなことをやるようになったんですか?」「なんでそんなヘンテコなもんがあなたの町、地域で広まっていったんですか?」という、自分の価値観と異なる相手との対話を求める素直でまっとうな「疑問」なのです。
 実際にコラアゲンさんはある時には80歳を超えるソープ嬢に接した経験から性的満足を与えられた事を笑いにしつつも、その時に自分が売れないことを愚痴り、慰められた時のエピソードを「普通の感覚で言えば色眼鏡で見られる仕事を長年続けてきた人なんだけど、そういう経験を軸に語ってくれた人生訓っていうのは人間の心を打つものなんだ」と語り、またある時は日本を代表する「刺青」の彫師に出会ったことでその彫師の真摯な職業観や人柄に触れたのをきっかけに自分も刺青を掘ろうと考えたりするなど、自分自身の長年育ててきた価値観とは異なっている価値観に触れて揺らいでいるのを正直に語ります。

 だけど、僕はコラアゲンさんの見せる心のゆらぎはすごくまっとうで人として誠実なものだと思うのです。少なくても僕は自分と異なる世界に生きる人々の喜怒哀楽を嘲り笑ったり、無関係だといって興味を示さない人よりも、これらに触れて自分なりの考えやことばを作ろっていこうもがいているたちの方がよほど信頼できます。そして今の日本に足りないものはまさにそこ。自らの価値観を絶対化せずに、相対化して考えること。コレって実はめっちゃくちゃシンドイ。だけど多様性のある社会を生きていくということは、そのシンドさに真っ向から対峙する事なんだと僕は思う。

 

「すべらない話」にも何度か出演しており、そのクオリティは保証! 

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日本各地で行うライブもおもしろい!!

 

 

 

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僕と喰始さんの出会いについて。不肖の弟子??でごめんなさい!!