サブカル 語る。

サブカルチャーなどについての雑談

百田尚樹の日本国紀が売れている件について考える

こんにちは。

 

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 本日のテーマは小説家、百田尚樹の書いた日本国紀。

 

 

 

 

 間違えた問題を出題する大学(笑)

 本の購入者によるとこの本は歴史書を謳っているくせに引用元や出展本の明記がないそうで、その時点で話にならない代物ですが、このブログで本の内容について是非を書こうとは思いません。ただ著者自身がtwitter上で呟いた以下ツイートから、どんな本かは推して知るべしというところでしょう。

 

 

 思うことは多くあれど、とりあえず百田尚樹には「間違った試験問題を出す大学ってどこか具体的に言ってみろよ!」といいたくなります。本来、この本を批判するなら、本を買って読んでからがスジというやつですけれども、この人はことあるごとにマイノリティーな立場にいる人のデマやヘイトをまき散らしているヘイト野郎。そんな人の本を買って儲けさせるのは金をドブに捨てるような行いなのでブックオフで100円ワゴンセールの棚に溢れたらまぁ買ってやってもいいかな。

 

日本スゴイ!もオウムも同類

 さて本題。この本に限らず数年前から日本の歴史や文化を異常に持ち上げることで「日本スゴイ」を叫ぶ本やテレビ番組の多さに僕自身、ほとほとウンザリさせられています。そこにあるのは他国や他民族を貶めて、ことさら日本や日本人をべた褒めする徹底的な内輪ウケ。それを見るたびに、この国が80年代~90年代に日本を騒がせた「オウム」に近づいているように思えます。

 

 

"さてそれでは、そもそも僕が問題とするオウムの人々の歴史認識とはどのようなものなのか。それはひとつには「陰謀史観」として括りうる歴史観であり、もうひとつは「ハルマゲドン」の語に象徴される終末思想である。それらの歴史認識は無論、オウム独自のものではない。それぞれに相応の出目と歴史を持つものである。しかし80年代消費社会を経て、オウムの中に沈殿していったこれらの思考は、その時点でサブカルチャー化してしまっている。ここでサブカルチャー化というのはその事象が本来、出目として帰属していた大文字の歴史から切り離され、消費社会の中で情報として集積され、引用される事態をいう。 (中略) オウムの人々の歴史認識の危うさは、陰謀史観にせよ、終末思想にせよ、その前提となる大文字の歴史を決定的に欠いており、その空白をサブカルチャーが代行してしまっている点にある。

 大塚英志 戦後民主主義リハビリテーション角川書店)より

オウムの本質は「カルト」でなく「サブカル」であり、それは今この国を覆っている - サブカル 語る。

  

 このマンガ原作者兼評論家の大塚英志による指摘ほど、現在の日本を覆っている空気を言い表している指摘はないと僕は思います。オウムやその信者らは自らの信じる教理やイデオロギーの正当性を保つため社会から遠ざかって引き篭り、自分たちに都合のいい情報だけを集めてつなぎあわせた不格好なパッチワークのような歴史や現実への認識を作り上げていきました。その情報の破片となったものはオカルト系雑誌にありがちな陰謀論やアニメの設定、各宗教の価値観など、単品ではなんのつながりも持たない単なる情報。それらを繋ぎ合わせて「それっぽい」ものを作りあげて、それを無批判に受け入れた。そうすることで彼らは「オウム」という物語を手に入れて、その中で生きていこうと本気で考えていたのです。僕にいわせりゃ、この日本国紀にせよ日本スゴイ!のテレビ番組にせよ自分たちにとって心地よくて都合のいい、断片的でなんの繋がりもない情報=サブカルを集めて悦に浸りながら「美しい日本!」という幻想の中に生きている人たちと、先述したオウム信者は同類でしかありません。

 

自信も元気もなくていい

 そんな日本全国でオウム化の進んだ背景にはおそらく90年代のバブル経済崩壊に伴う「経済大国日本の失墜」というのもあったのでしょう。子どもだった僕を含めみんなが日本=金持ちという幻想に浸り、その中で自分も偉くなった錯覚を味わえていた時代が景気の悪化によって「カン違い」だったという現実を突き付けられた90年代。その後半になって「戦前の日本や嘗てのこの国は凄かった」と声高に吠えたり、他国を必要以上に貶めるような本の出版が目立つようになり、2000年代中盤以降~現在には映画「三丁目の夕日」みたいな昭和30年代への不毛なフィーチャーとそれをなぞる様に計画された2020年の東京オリンピックに2025年の大阪万国博の決定。これらの古代から現在までの歴史の自画自賛追体験は「現代から逃げて、引きこもりたい」という意識の表れなんだろうなと僕は思っています。つまり百田尚樹も、その読者も日本スゴイ!の番組の作り手も自信を持てず元気もないこの時代そのものが大っキライなんですよたぶん。

 だけど、それって甘え以外の何物でもないよね。自信なんてなくたっていい。元気もいらない。あなたの人生は、そんなサブカルで作られたうさん臭い情報で満たされる程度の軽いものなのか?というだけ。本当にプライドがあるなら現実の抱えている諸問題をじっくりと見つめ、少しでも改善できるよう取り組め。そのなかでやるべきこと、やれることを自分の頭の中でで考えながら行動を起こせというだけです。「古き良き日本」という概念に浸って現実から逃げるなと周囲や自分に言い聞かせ僕は今日も仕事に行くのでした。