サブカル 語る。

サブカルチャーなどについての雑談

ゆるキャラの歴史と人気のその後を考える -ブンカッキーからすべてはじまった-

こんにちは。

 本日のブログのテーマは「ゆるキャラ」と決めており、どんな記事を書こうかな?と考えていた矢先、このニュースを見つけました。

Yahoo!ニュース - ふなっしー 弟を初お披露目(2014年10月15日(水)掲載)

 

 ゆるキャラ界の稼ぎ頭である「ふなっしー」の知名度は相変わらずすごい。ただまぁ、いつかは自治体の燃えないゴミ集積所にふなっしーのグッズが氾濫するであろう事は想像できますけど。僕がブログで今回クローズアップするのはこのキャラ。

 

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 広島代表の「ブンカッキーです。頭には広島の県木「モミジ」をのせて、胴体にはこの時期に旬になる「牡蠣」を採用。肩から腕の青い外枠は「ひろしま」を表現しており、右手に持つのは謎の指揮棒。ふつうに考えて、ぜったい一般ウケしないだろうなと思わせるキャラですが、このキャラこそ、現在の「ゆるキャラブーム」を作ったパイオニアである事は意外に知られていません。マジでこのキャラがいなかったらふなっしーくまモンもこの世に産まれてませんでした。


~ブンカッキー・牡蠣 旬がくまモンに挑戦状を持って訪問~ - YouTube

 

 この「ブンカッキー」なるキャラは、国民文化祭 ひろしま2000」イメージキャラクターとして誕生。20歳になろうとする現在でも広島県民の「文化」を担い、愛されています。

※gif動画で躍動を見せるブンカッキー

http://www.hiroshima-kenbunsai.jp/bunkakki/

 広島県の文化+牡蠣でネーミング「ブンカッキー」となっているそうな。なんていったらいいか。広島の名物品をこれでもか!!と鍋にぶちまけて「文化」という名の調味料だけで味付けをして作った、食材の食べ合わせを考えないごった煮みたいなキャラとでもいいましょうか。僕がこのブンカッキーのことを知ったのは今から8年ほど前。今も昔も「みうらじゅん」を愛してやまないマイナー趣味の妹を通じてでした。

 

妹:お兄ちゃん!ゆるキャラって知ってる?!

 

 ゆるキャラなる単語を初めて聞いて首を傾げる僕に妹は「みうらじゅんがマイブームの後に掲げる新たなブームよ!」と声を荒げ、インターネットでこのキャラを検索してみせたのでした。そんな僕のファーストインプレッションは「何コレ?」

 

妹:文化とカキを合わせてブンカッキーっていうの!
僕:いやだから、なんで文化と牡蠣を合わせるの?後、この手の指揮棒はナニ?

妹:音楽の指揮で文化を表現しているんじゃない?

 

「テキトーすぎるだろ!!」という僕のツッコミに「だからゆるいのよ」という妹の言い分に僕は力技で納得させられた感じでした。みうらじゅんがブンカッキーを通じて「ゆるキャラ」なるものを発信してからもう10年以上。このゆるキャラこんなに流行るとは僕も思いませんでした。

 

 ブンカッキーは「ゆるキャラの歴史」そのものを体現するパイオニア的キャラであることは間違いありません。くまモンふなっしーニューフェイスの「ふなごろー」などの隆盛も、こういうイベントを通じて日本各地が盛り上がったりできるのも


ゆるキャラグランプリ オフィシャルウェブサイト

 ブンカッキーの存在なくしてあり得なかったといっても過言じゃありません。ただ、このブンカッキーの知名度はきわめて低い。有吉弘行広島県のことを「惜しい県」といってPRしていましたけど、このブンカッキーについてだけはまったく惜しくない。ためしにyahooで「ブンカッキー」を検索したところ約25,000件。ふなっしーはというとおよそ1,220,000件!

 

キャラクターのグッズの数を以下の通り楽天の検索で調べてみるとふなっしー

 ふなっしー ぬいぐるみ(特大)

ふな ふな ふなっしー♪ 〜ふなっしー公式テーマソング〜などを含め約6800件。これに対してブンカッキーはグッズ販売なし。せいぜい広島件主催のイベントで非売品のぬいぐるみが配布される程度。もうダブルスコアどころの話じゃありません。これはドラゴンボールの戦闘力で例えたらフリーザの第二形態と、ナメック星にやって来てライバル&ザコキャラのキュイ相手に戦って、汚ねぇ花火を打ち上げていた頃のべジータほどの差であります。ちなみに、その頃の二人の力量差は以下のとおり。

フリーザ第二形態 戦闘力:1000000以上
べジータの初期戦闘力  :24000

 

 惜しくない。この両者の差はまったく惜しくない。ぜんっぜん惜しくない。圧倒的な実力差によりブンカッキー完敗です。この両キャラの差をどうしたものか。別に僕は広島県出身でもブンカッキーの関係者でもないのでどうでもいいっちゃどうでもいい話ですが、実はこの両キャラの現状こそ、現在の日本の抱えているゆるキャラの問題点を図らずも表しているものであるといえるのです。それはゆるキャラが年々可愛くなっていくにつれて、キャラそのものがゆるくなくなっていきているという傾向。これについては関東学院大学の新井克弥教授の指摘が、最も適切でしょう。

 

ゆるキャラ 終わりの始まり


"さのまる"グランプリ獲得は、ゆるキャラブームの「終わりのはじまり」?

 

 話をまとめると「ゆるキャラ」に触発された団体が次々にゆるキャラを大量生産することで、キャラクターの消費速度がだんだんと加速を続けるにつけ、本来のデザインやキャラの本質的な「ゆるさ」が消失していき、結果として「ゆるキャラ」という名の「ゆるくないかわいいキャラ」がメインストリームになっている。まぁこんな具合です。それについてはゆるキャラグランプリ2013で大賞となった栃木県の「さのまる」をみても一目瞭然。さのまるは栃木県代表のキャラで、頭にはローマ字表記の「SANO」をデザインした佐野ラーメンの丼をかぶり、前髪は佐野ラーメンの中太ちぢれをイメージ。腰には佐野市名物の「いもフライ」の刀を携えているといいます

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栃木県佐野市のさのまる

 ちなみにYahooで検索したところ検索数は約115,000件。楽天で調べたら関連グッズはおよそ6000件ありました。人気者グッズ定番であるマスコット、Tシャツ、DVDなどなど。ゆるキャラチャンピオンともなると、扱いもやっぱりVIP級です。

 

さのまる ぷにぷにマスコット スマホピン付

さのまるだいすき!![DVD] / バラエティ

Tシャツ メンズ 半袖 Tシャツ キャラクタープリント

 

 でも、このさのまるってキャラ、本当にゆるいか?と思う人は多いでしょう。 確かに可愛いけれど、ブンカッキーと比べたらさのまるは地域性の具現化に乏しいのが分かります。

 

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 ブンカッキーは胴体が牡蠣、県木である「もみじ」、青のボディラインは広島の「ひ」のひらがなを象ったデザイン。ありったけの材料を詰め込み、味を考えずに煮込んで作った、ドラえもんジャイアンの料理メニュージャイアンシチューのようなクセの強さがキャラから漂っています。だけどこのブンカッキーみたいなキャラの持つクセの強さなどの個性を味わうことこそが、みうらじゅんが本来提唱していた「ゆるキャラの楽しみ」だったんじゃないかと思うのです。

 

 さのまるとブンカッキーを比べたら、さのまるのほうがたしかに一般ウケするデザインです。だけどブンカッキーにはウケを狙わずに、ただ広島県をアピールするためだけにいるキャラの持つストイック性、いいかえれば愚直さ。また、その愚直さゆえのバカバカしさのようなものを強く感じるのです。別にさのまるを否定するつもりはありませんけど、ゆるキャラっていうのは本来、知名度の低い地域やそこで行っている取り組みなどを多くの人に知ってもらうために生み出されたものであり、そのキャラの地域アピールを「笑い」という文化に昇華したものだったんじゃないか。僕としては別に可愛くなくても、デザイン的に未熟でもいい。泥臭いまでの地域愛を訴えてくるゆるキャラが見たいのです。かわいい「かわキャラ」じゃなくて、本当にゆるい「ゆるキャラ」を。

 

 あ、そういやこの日本のゆるキャラブームを受けてアメリカでもゆるキャラが作られたそうな。

 

 

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   アメリイリノイ州代表「Big Lincoln(ビッグリンカーン)」

 

 日本のゆるキャラグランプリに出馬しちゃったよプレジデント。以下はビッグリンカーン本人のコメント。

 

"日本で「人民の、人民による、人民のためのゆるキャラ」を目指して、米国イリノイから参上。顔はこの通りだが、心は広く日本の皆さんと「ゆるく」お付き合いを続け、そして私の故郷にもお越しいただきたいと願う"

 

出典:2014年度ゆるキャラグランプリオフィシャルウェブサイトより 

 

 このゆるキャラグランプリのため、アメリカでは「予備選」とかあったんでしょうか?実に気になる。黒人奴隷開放の父であった彼の功績もあり、オバマが大統領となったというのもなんだか深く考えさせられるものがある今日この頃。

 

追記:2014年度のゆるキャラグランプリ オフィシャルウェブサイトを調べると 各キャラのエントリー数・投票ID登録数共に過去最高を記録したとのこと。相変わらず、ゆるキャラ達は高い注目度と人気を誇っています。誰だっておらが町代表の人物やモノが世間で注目を集めりゃ嬉しくなりますが、だからといってグランプリを獲得したゆるキャラが地域復興につながるかというと、必ずしもそうともいえないと思います。

 確かに、グランプリ受賞のゆるキャラがいる地域にはそれを目当てに観光客もある見込めるでしょうし、地域そのものの知名度も高まります。だけど、それは所詮一過性のものであって長くは続きません。ゆるキャラはフォロワーの氾濫によりブームが生じた結果、現在は日本各地で生産され続けていますが、どのキャラも「消費期限」後は何も残ることのない「消耗品」となっているからです。

 


「ふなっしーで打ち止めだよ」 「ゆるキャラ」ブームにマツコ毒舌 : J-CASTニュース

 

 上記でマツコ・デラックスの指摘しているとおり、ゆるキャラで町おこしという甘い考えはたぶんもう通用しない。 くまモン、さのまるみたいなキャラがいたら、それを目当てに来る観光客も増える。ふなっしーみたいなキャラがいたら市民税の増収も見込める。だけどもそれらはキャラの人気の終焉で打ち止めとなり、後に続きません。ただ外部から人と金を集めるだけではなく、地方はこの先10年、20年後もその地域があり続けるためのアイディアを本気になって考えなきゃいけない。人を集めてお金を落としてもらうことも大事ですが、現在100人程度の人口を、どうやって10年後に110人に増やすべきかを考えた行動こそ、ほんとうの地域振興じゃないのでしょうか。

 ゆるキャラによる町おこしのブームは本質的な地方の「過疎」という問題から、当事者達の目を背けさせ続ける結果にもなりかねない。この事は認識しておいたほうがいいと僕は考えています。

 

 

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