サブカル 語る。

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「私が愛したウルトラセブン」を思い出した沖縄旅行

こんにちは

 先日の沖縄旅行以来、生活リズムが休日モードから戻らず今週は仕事が大変でした。 今回の旅行では首里城や海洋博公園などトを回ったり遊びまくりました。そんでもって海洋博公園から見える海を眺め「そういや海洋博も金城さんの作品だったな」と、感慨に耽ったのでした。

 

 

 

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ウルトラマンやセブンの生みの親「金城哲夫 

 金城さん。本名は金城哲夫といい「ウルトラマン」「ウルトラセブン」でメインライターを務めた、まさにウルトラの生みの親ともいえる脚本家さんです。沖縄出身の金城さんは上京後に知人の紹介で円谷プロ入社。以来、多くの特撮作品やドラマを手がけました。1969年に円谷プロ退社後は沖縄で舞台の脚本ほか地元ラジオ局のパーソナリティーを通じて地域密着の活動を展開。1975年にはその一環で沖縄海洋博覧会の演出・構成も務めました。

 

 さて本題。この「金城哲夫」という名前から、多くのウルトラファンはウルトラマンやセブンを連想すると思いますけど、僕はここで「私が愛したウルトラセブン」をクローズアップ。このドラマは同じくセブンで脚本を務めた市川森一さんの作品で1993年にNHKで放映されました。

 

「私が愛したウルトラセブン」とはどんなドラマ? 

 このドラマの舞台は1960年代。セブンの制作を通じて集まった俳優と脚本家、監督、その他スタッフや周囲の人たちの青春を描いた群像劇になっています。そしてドラマで金城哲夫を演じたのは佐野史郎さんでした。金城さんはセブンの物語を描きながら嘗て日本の薩摩藩によって日本にさせられたり、戦後、アメリカの手で統治されることになった故郷、沖縄「琉球」と自分のあり方について苦悩を手放せずにいる設定。飄々とした性格と口調でみんなから「金ちゃん」と慕われる好青年ながらも心の奥底では沖縄の未来を強く憂い、それをセブンのストーリーに反映させる様子を演じる佐野史郎さんの演技は説得力があり、思わず引き込まれたのを今でも覚えています。

 

 けど、実際の金城さんはどうだったのか?円谷プロでその当時セブン制作に携わった監督たちの話では「金城さんが沖縄や米軍などについて話した記憶が無い」ため物語のルーツを当時の沖縄の抱えていた問題に求めることには否定的意見も少なくないということですが、本当にそうだったのか。

 

 この「私が愛したウルトラセブン」が放映された頃の僕は高校生。小さい頃からウルトラマンが大好きだったけど、あくまでもそれは人間社会を壊す怪獣を倒すヒーローに憧れる程度のレベルでした。ウルトラシリーズは放映当時の世相が色濃く反映されたストーリーになっていることを知ったのはこのドラマがきっかけです。ドラマは2週連続の2部構成で、第1部はウルトラセブンのメイキング。当時のセブンの撮影現場の悲喜こもごもなエピソードを参考に、ドラマ作りにのめりこむダンやアンヌ、大勢のスタッフたちの青春にスポットをあてるつくりになっています。

 

 ただ、このドラマ。単なるセブン制作の青春物語と思ったら大間違いで第2部で思いがけないハードで重厚な展開になっていきます。セブンが好評のうちに放映される中、撮影の現場ではそろそろ最終回ロケが始まろうとする雰囲気に。ダンやその他キャストも夢みたいな特撮世界を卒業して別の作品に出演する俳優に戻っていく。その淋しさを抱いていたアンヌはある日、人伝でベトナム戦争出兵を拒みアメリカから追われているという若い米国兵と出会います。兵士の話では脱走兵の逃走をサポートする組織が日本にあり、その間だけ匿ってもらいたいとのこと。そんでもって偶然にもその兵士を国外脱出させる場所は最終回のロケ現場近く。いきなり巻き込まれた思いがけない現実に困惑しながらアンヌとダンは祖国に逆らい、徴兵を逃れる米国兵士の姿にセブンの世界を見ます。まるで彼は、戦争がイヤで地球に逃げてきた宇宙人みたいだな、と。

 

 そして2人と番組のスタッフたちは現実でセブンの世界を生きてみせるかのように、その兵士を匿ってロケ現場に出発。ロケを直前に控え、東京に残る金城さんはとぼけた口調で「もしもセブンがベトナム戦争で闘ったらアメリカ側につくだろうなぁ。だってベトコンなんていかにも怪獣っぽい名前だもんなぁ」とおどけてみせたり、兵士を匿うアンヌを「アメリカの怖さを全然分かっていない!」と批判しながらもそのアメリカに対して戦いを挑もうとする姿を見て「まいっちゃったなぁ」と、嘲笑とも賞賛ともとれる曖昧な高笑い。そして、周りにはなにもいわず沖縄へ帰るのです。

 

ウルトラセブンと社会 

 もちろんドラマはまったくの創作です。だけど大国間の軍拡競争や技術の力で闇雲な成長を目指す高度成長期への批判など、当時の社会問題への批判を思わせるエピソードも多いセブンの世界がドラマの元になっているせいかやけに、ドラマにもとても説得力がありました。

 たまに僕は沖縄のニュースを見て思います。もし金城さんが生きていたらどんな物語を書いただろう?と。当時と違い、日本に返還されながら未だ多くの問題を抱えている沖縄をどう捉えたか。その頃のスタッフのいう通り、セブンには当時の「沖縄」を反映させていなかったかもしれない。だけど金城さんには現代社会への批判意識みたいなものがあり、それを物語に反映させていたことは確かだったと思う。

 

 人間は必ずしも善ではなく、時に愚かな道を選ぶ存在であることに苦悩しながら人間を守り続ける巨人を作った金城さん。現在の日本をどう考えるだろう?

 

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