サブカル 語る。

サブカルチャーなどについての雑談

ウルトラマンジードを「父と子」ではなく「母と子」の視点で考えた感想

こんにちは。

 本日で最後となったウルトラマンジードの放映。いやぁ、面白かったっすね。

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ダークサイドなウルトラマンの息子

 名前の「ジード(GEED)」の由来は物語の主人公、朝倉リクの口ぐせ「ジーッとしてても、ドーにもならねぇ!」というアクティブで前向きな叫びを略したとされているけれど、もう1つの由来は英語で遺伝子を意味する「Gene(ジーン)」、運命を意味する「Destiny(ディスティニー)」のつづりの頭文字「Ge」と「De」を「GEDE(遺伝子の運命)」と並べ、運命に抗うことを意味させるため「ED」をひっくり返した造語だと本編でも語っていました。その名の示すとおり、この朝倉リクという青年はウルトラの力を持ちながらも自ら力を求めて悪に染まった「ウルトラマンベリアル」の息子という、今までとは異なる出目をもっているのが大きな特長。それだけに物語は「悪」である父親とその対極にある「息子」の対立っていう視点で進められますが、ストーリーを追っているうちに、これは「父子」ではなく、実は「母子」の物語じゃないか?と僕は思うようになっていきました。

 

 物語はウルトラマンベリアル(写真1)が、宇宙そのものを破壊する「クライシスインパクト」というビッグバンみたいな現象を発生させて世界を崩壊させるのを、ウルトラ一族の長老「ウルトラマンキング(写真2)」がその身を挺して食い止め、宇宙の危機を救ってから6年後の世界が舞台。孤児として育ちながらも優しく明るい性格の青年「リク」は地球の怪獣出現をきっかけに、自分がベリアルの息子だったことを、ベリアルがリクのため用意していたコンピューター「レム」によって知らされます。そして人々と地球を守るため、怪獣に挑む決意を固めたリクにレムはウルトラマンに変身する力を授与。変身後のコードネームを問われたリクは自らを「ウルトラマンジード」と名乗り、怪獣と闘いながら父親ベリアルと自分の秘密を追うとミステリーの要素も含んだものになっています。

 

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ウルトラマンベリアル(写真1)

 ©円谷プロダクション

 

 

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ウルトラマンキング(写真2)

 ©円谷プロダクション

 

物語の根幹は、リクの「ネグレクトへの復讐」

 さて、ここから本題。このベリアルの息子「リク」という青年。彼を生み出したのはベリアルに心酔する宇宙人「ストルム星人」ケイという男性でした。ケイはベリアルの遺伝子を材料に、ベリアルの道具となる人間によく似た人口の生命体「リク」を作って地球に放った産みの母。その後、リクは捨て子として、人間に拾われて育てられます。つまりこの時点でリクは実父と母にネグレクト(育児放棄)を受けていることからこの物語は「両親への復讐」という根幹のテーマがあり、その復讐を果たすための力を与えたのはウルトラマンとしてのリクの育ての母」であるレムであると考えることもできるのです。今ふと思ったけど、レムの声が女性のものだったのもその辺を意識したものだったのかもしれません。

 

 ウルトラマンとなったリクは戦いや人々の出会い、「生みの母親」であるケイとの直接対決を通じて強くなり、物語のクライマックスで「父」ベリアルと対峙。ベリアルは圧倒的な力(父性)で息子を抑えつけその肉体を自分の身体へ取り込みを図ります。つまり、リクは父親に力を奪われたことで「育ての母」のレムと引き剥がされるのです。

 

リクを巡る二人目の母親 

 そこで次に注目してみたいのはそのリクの危機を救った「鳥羽ライハ」という女性。ライハはケイにより両親を奪われたという過去を背負っていることから、リクとは常に行動を共にしていました。物語が進むうちにライハも自身の出生の秘密を知ることになります。その秘密とはベリアルを封印した「ウルトラマンキング」との関係。誕生の際に難産の危機に晒されていた幼いライハは、ウルトラマンキングに生命を救われていたのでした。その影響でライハの身体にはウルトラマンキングの力が宿っており、ライハは秘めていたキングの力をリクに譲渡。そのキングの力でリクはウルトラマンとしてさらに強く生まれ変わることになります。つまりそれはライハもまた「ウルトラマンとしてのリクの育ての母」になったことを意味する。そういえばライハも先述したレムも秘密基地に私物を持ち込んで散らかしたり、狭い基地で野球をやったりなどするリクの幼さやだらしなさを口うるさく注意する場面も多くありました。そういう描写も「母親」を意識してのものだったのかもしれません。 

 

ウルトラマンとエディプスコンプレックス 

 このことから「ウルトラマンジード」という物語の本質は「二人の育ての母親から貰った力による実父と実母への復讐と、それによる葛藤の克服」だったんではないだろうかと僕は考えています。最後のベリアルとの直接対決でリクがベリアルに「倒す!」という言葉を使わず「僕はあなたを超える!」」と叫んでいたのもこの作品のテーマが単純に二元化にされた「正義と悪の闘い」でなく「エディプスコンプレックスを抱えた青年の父親超え」であり、だったということの証左なのでしょう。

 

エディプスコンプレックス - Wikipedia

 

 この「父性」と「母性」という概念こそが日本のマンガやアニメなどのサブカルにおいて大きな影響を与えているものであり、今後この国がサブカル表現がそれらをどう克服していくべきかというのが大きな課題なんだけども、そうなったら話も長くなるのでその話はまたあらためて、別の機会で!その際はぜひ、どうかまたお付き合い下さい!本日はこの辺で。

 

 

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