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サブカル 語る。

サブカルチャーなどについての雑談

アニメ業界で働いた体験から今後を考え、改善案を提言

こんにちは。

 

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今日のブログのテーマはこの話題。

www.excite.co.jp

 

ぶっちゃけて言うと、もう20年以上前から労働環境の苛酷さなどで人手不足に陥っていたアニメ業界で、作品の制作スケジュールの崩壊を理由に放映延期になる番組が増加。10月から放送予定のアニメ番組が今月だけで3本も放映延期になったとの事。

以前からこのブログでも何度か書いてきたことだけど、20年ほど前の20代の頃に、ある大手の制作会社で契約社員の身分でアニメの制作に携わりました。その頃の労働環境などについてはもう過去記事で何度も書いているのでここで述べませんが、心ある業界人には労働過多で薄給なこの職業で人が足りなくなり、深刻な人手不足に陥った挙句、制作体制が成り立たなくなっていくことを憂いている人もいました。でも、このギリギリな環境を打開できる手がないのでどうしようもない。そんな諦めの中に業界はありました。僕自身、末端の制作だったけどこの環境を見ていて「アニメ業界ってマジでヤバイ」っていう危機意識を強く持っており、先輩について仕事を覚える立場ながらいくつかその危機意識を語り、改善案を上司に提案させてもらったこともあったけどあたりまえながら上司には「生意気いうな!」と怒られるだけ。結局のところ、僕は会社から「お前いらない!」っていう話になってアニメ制作をフェードアウトすることになります。

そんな立場にいた自分からすると今回のこういった話題は「ざまぁみろ!」と叫び、あざ笑ってやりたいところです。けどその一方で僕自身、たくさんのアニメを見て育ってきたこともあるためアニメ業界について複雑な思いはあれども、その世界で頑張ろうといった若い人を応援したい気持ちもあります。そこで参考になるか分からないけど、自分が制作時代に心がけた事や会社に提言をした事を幾つかこのブログで書こうと思っています。

自分の経験からアニメ業界で改革に取り組むべきは以下3つ。

①社会人意識
②業務の契約の書面化
③制作スタッフの業務効率化

まず①の「社会人意識」について。これは時間を決め、その予定に沿って行動する意識。さらに一般常識の欠如についての自覚を指しています。僕がアニメ制作会社に入社した頃、制作部の人たちは出社時間がひどくまちまちでした。定時で来る人もいれば昼頃になって会社に来るのが当たり前になっている人、残業などのため自宅に帰れず会社に泊まる人。そんな人が常に出入りしているためすごく時間がルーズになっている印象がありました。もうひとつ気になったのが、身だしなみのだらしなさ。いつも皺くちゃな服に汚れている靴。電話対応時の汚くて教養のなさそうな言葉づかい。どれもこれもが大人に思えなかったので、新入社員の僕は周囲の連中を何度怒鳴りつけてやろうか?と思うほど呆れていました。
制作会社の制作進行というのは単なるスケジュール管理者ではありません。音声や背景画作成、フィルムの撮影、映像編集など別セクションを請け負う他の会社を回ったりする会社の顔、いわば『営業』であってそこの制作がだらしなかったら=会社のだらしなさという判断にも繋がる。だから、振る舞いをきっちりしなくてはいけないのではないか?ただ、それを周囲に訴えてもまともに相手にはされないため自分だけでもと思い、社会人のマナー本などを参考にそれを実践。入社以降もスーツを着続けるほか、丁寧な口調の電話応対、言葉づかい、整理整頓などを心がけました。そこを律していけば少なくても相手は自分のことを甞めないだろう。ひいてはあの会社のAMっていう制作はきっちりしているのでいい加減な仕事はできない。そう思わせて仕事に主導権を握ってやるんだ!と考えて。
ただ、出社時のスーツは上司に「不規則な業務で大変だから着てこなくていい」と注意を受けたためスーツ着用については途中でみんなに合わせましたけど、せめて口調だけはと思い、丁寧な応対だけは続けました。といっても普段の言葉づかいに気をつけたり、中途採用で面接に来た人にお茶を出す程度のことなので、さほど大したもんでもありません。だけども、僕のいた会社はそんな事さえまともにできない人たちの集まりでした。それを続けた結果、どうなったか? 

先輩達や周囲の会社に笑われました。

電話の応対を聞いた先輩達は「あいつの口調はサザエさんの名乗りみたいで変」と僕を笑い、
※『株式会社〇〇制作部AMでございます』という名乗りをそういって笑っていたみたいです。
 面接者にお茶を出した事も「そんな奴はよく会社に来るんだから、わざわざ相手にしなくていい!」といわれたり。やがて『会社でお前は浮いているからそういうのはやめろ』と言われました。

まずは自分の態度を律して周囲へ意識改革を訴える。考えてみたらすっげー生意気でムカつく新入りだっただろうとも思うけど業界を離れた現在、IT業界で社会人やっていてもあの業界のだらしなさはどう考えてもおかしい。この僕の提案が参考になると思ったアニメ業界の関係者の方がいらしたら、ためしに制作部できっちりした身なり、言葉づかいの改善などのため社会人マナー研修を実践してみてはいかがでしょう。おそらく講師の先生からひどく注意を受ける事になるだろうけれど、それこそアニメ業界の常識=社会の非常識だという認識につながり、社内や業界の空気を変革させる最初の一歩になると僕は思います。

 

続いては② の「業務契約の書面化」について。先ほどアニメ業界の常識=社会の非常識と述べましたけど、その非常識の中で最も問題なのが「契約意識の薄さ」だと僕は考えます。アニメっていうのは基本的に制作会社がフリーの監督、演出、作画等のセクションに業務を委託後、各セクションでのスケジュールの舵取りを行います。結局のところこの舵取りが破綻してアニメ制作スケジュールが遅れる事となる。この大きな原因になっているのがフリーのスタッフたちの作業遅延です。脚本、コンテ、原画、動画などなど、フリーのスタッフにお願いをしているセクションで作業が伸びたため、この後の予定が後ろにずれ込んでいく。その後ろにずれ込んだスケジュールを制作で知恵を絞り、毎週毎週ギリギリで帳尻を合わせるというのが業界の「あるある」。

※あ、ちなみに背景や動画、音声など会社単位でお願いしているセクションでは、作業が遅れているっていう話は自分の経験上、ほとんどありません。

フリー契約のスタッフはその作品単品だけでなく、ほかの作品も掛け持ちで並行で作業にあたっています。たとえば原画だったら作品Aの12話で原画12カットを担当(1カットあたり4000円)。他会社の作品A`20話で原画を14カットを担当。(1カットあたり3500円)

4000×12=48000円
3500×14=49000円
-------------------------
合計    98000円

※実際には請け負っている作品はもっと多いだろうけどこんな感じで。

 

結局のところ単価が安いので多くの仕事を受けなくては生活できない。そのために自分のキャパを超える量も受けざるを得なくなり、作業が追いつかなくなり、お願いも口約束なのでその辺が「なぁなぁ」になっていく。フリーのスタッフの方々の事情も理解できるんですけど、アニメっていうのは単なるものづくりじゃなくて、「産業」である以上は遅れは許されません。だからこそ「契約書文化」を根付かせるべきだと僕は考えています。クリエイターだから遅くなって当たり前とか、そんなことをいっていたらものづくりなんてできないとか甘えるなバカヤロウ!考えてみたら野球選手やサッカーの選手だってフリーの身であり、各チームとの契約を交わしてチームの勝利に貢献をするという業務にあたるプロフェッショナルです。なのにアニメという現場はそれぞれのプロと契約書を交わさずに口約束でお願いしている。それってよく考えたらとても変な話なのです。 ただフリーの方々はたったひとつの作品の業務に定着させられたらたまらないと思うでしょう。そこでフリースタッフに「他の作品の約束を蹴ってでも、この作品の業務を続けたい」と思ってもらえる条件を制作会社も提示する。

たとえば

①作品全26話で原画を全部担当いただく(本数はそのエピソードにより変更)。
②作品全26話トータルの依頼で260万で契約(エピソード1本あたり10万で契約)。
③期日よりも作品を早くアップさせたら、インセンティブボーナス発生。
④但し作品のアップが遅れたらその遅延状況によって減額。
⑤業務スケジュールを破綻させるほどの遅延発生には契約解除と違約金発生。
⑥この契約に支障をきたさない前提において、他会社の依頼も認めるものとする。
⑦契約の内容については口外しない。

この内容は今、思いつきで書いたものだけどもっと練り込んでいけたらフリースタッフにとっては仕事と報酬の安定、制作にとってはスケジュールの安定。この両者の利害を一致させるような話だってできると僕は思っています。今述べた契約案では原画の単価がおよそ2倍になっているので「高い」と思われる人もいるでしょう。けど、契約によりスケジュールの透明化を図ることでどれだけの時間と他の予算を確保できるかを考えたらこの金額だって安いくらいですよ。

こういった取り組みが業界に置いてもはや一般的だったら僕の不勉強なんだけども、そういうことをまだ実践されていないんだったらぜひ考えてみていただきたいです。

そしてある意味で自分の経験上、最も伝えたい③の「制作スタッフの業務効率化」。これについて語る前に経済産業省によるアニメ制作に携わる人々の待遇や労働環境のヒアリング調査・アンケートをまとめたアニメ業界関係者の労働実態調査の報告書を紹介。

http://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/downloadfiles/houkokusyo.pdf

全部で167ページにもわたり、制作における会社間契約および会社と個人事業主契約についてかなり細かく調査されているので興味ある人は目を通して欲しいとは思うものの、やはりこの業界の「契約」っていうものについての意識の低さは問題だと思わざるを得ません。このあたりの話はこのアンケートを熟読していずれあらためて考えてみたく思います。

さて本題。

前回はブログで会社とフリーのスタッフ間に「契約書」を発行することを徹底させるべきと述べました。契約によって制作会社は原画スタッフの確保と制作スケジュールの安定。フリースタッフはある一定の仕事量と報酬などの確保。この両者間の利害を一致させる事が大事。酷い物言いだけど「制作はお金で時間を買え!」と僕はいいたい。そうやって時間を工面することでアニメ業界の潤滑油となっている「制作進行」の業務拘束時間を軽減させること。作画スタッフの低賃金とか人手不足とか問題はその他にも多いけど、この制作業務を改善しなきゃ時間やモノをうまく回せません。

制作というのは小説やアニメになっているので、どういう業務なのかアニメ業界について興味を持っている人は想像できるだろうと思います。 原画、動画、背景画などの素材の締切日を決め、それらを集め音声の録音(声優のアフレコ)までに映像フィルムを作る。まずはコレ。声優さんは脚本片手に映像を見ながら担当の役の声を吹き込みます。このアフレコのタイミングに映像がなけりゃ話になりません。このため制作はあらかじめ設定されているアフレコ日までに原画、動画などをアップさせて、そこに彩色を施して放映できるレベルの映像をつくることを目的とします。ただ、殆どその通りにはならないけど。たいていはアップさせた原画や一部の動画を撮影、彩色して映像フィルムを作り、声優のアフレコ。音声データを作っておき、未完成の原画や動画などをあらためて撮影してその部分を差し替え。そうやって完成させた映像と音声のデータをマージさせてフィルム完成。

※アフレコの日まで原画がぜんぜんできていないというケースも過去にありました、そういう場合には原画のL/O(レイアウト。下書き)を撮影したり、ひどい場合には絵コンテのコマを切り取って撮影っていう事もある。

そういった過酷な業務なんですけども、最近はアニメ制作現場をテーマにし辻村深月さんの小説「ハケンアニメ!」 

CLAMPさんの挿絵がなかなか 

アニメの「SHIROBAKO

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これらの作品が話題になったこともあり、アニメ業界への注目や希望者が増えているような印象です。これらの作品については物語チラ見程度で確認しましたが、まぁファンタジーだよね。という以外の感想を持てません。っていうよりも、制作の辛い経験だけが頭をよぎるので最後までこれらの物語を読めないというのが経験者である僕の率直な感想。どの物語も主人公は「女性」ですけれど、そもそもこのアニメ業界、女性の比率は決して高くない!僕に言わせりゃ、そこからしてまずファンタジー。女性の主人公が困難や挫折を乗り越え・・・明るい未来へGO!または「お仕事は辛いけど、やっぱり私、アニメ作りが好きなんだ!」とかいったオチになっていりゃ、そりゃお話としちゃ面白い。だけどAMネットワークの体験だとアニメ制作の業務と生活ってこんな感じでした。

①朝09:00に起床
②朝10:00に出社~翌朝の05:30まで勤務
③朝06:00に就寝

 1~3のサイクルをただ延々ループ。ごくまれに深夜03:00頃に仕事が終わると「おぉっ!今日の業務、思っていたよりも早く終わったんだな」と上機嫌!!

 ・・・狂ってるだろ!!!!!!

こんなふうに朝の10:00に出社して、帰宅が翌朝6:00。んでもって3時間ほど寝てまた10:00に出社。こんな生活を続けていたら誰だっておかしくなる。この制作の勤務時間を長くさせているのが業後の原画回収です。制作としての業務的な打ち合わせや交渉などはたいてい勤務時間で収まるんですけど、業後に都内や埼玉県の周辺を車で走り回って原画など撮影素材を集める「回収」業務がほんとにつらい。夜6:00に会社を出発して、戻ってこられるのが終電ギリギリかひどい時には徹夜。このため制作会社では車の事故も多く、僕も車の運転途中の居眠りで中央分離帯に乗り上げた事がありました。ちなみにアニメ制作会社っていうのは伝統的に青梅街道沿いに多くあるため、青梅街道で深夜に車の事故があったらアニメ業界の関係者だと思えという話もあるんだけど、この話だけでも制作の過酷さは伝わります。

アニメの制作さんというのは、いってみれば潤滑油。だからここが濁るとスケジュールやモノの流通がメチャクチャになり、アニメ制作そのものの破綻に繋がります。この制作の負担軽減策として僕は「夜勤シフト制の徹底」を提案したい。会社に制作進行スタッフが7人いたとしたら、5人は通常時間の10:00~19:00勤務。残りの2人は10:00~6:00までの「素材回収」だけを業務目的とした深夜業務。この業務を当番制で割り振っていく。これを徹底させるだけでもかなり違うと思う。

こういった業務の割り振りを現在の制作会社が行っているか?
昔からこういう形態の勤務は制作業務で一般的にあったのか?

そこは僕にもわかりませんけれど、少なくても僕が携わった2つの会社ではそういうことはなかったし、周囲にもそういう話は聞いたことなかったので、おそらくだけど一般的ではなかったんだろうな。まぁ、僕の経験は古い話なので現在は夜勤シフト制みたいなしくみが当たり前になっていたりもする可能性もあるんだけどもしも制作業務の軽減という課題を抱えている会社があるとしたらぜひ、お試しいただきたい提案です。

そして結局のところ、アニメ業界全体の業務改善は「アニメのお仕事」の社会的なステータス向上にもつながっていき、その結果として離職率の低下や将来有望な人材の確保という形となっていくのではと思う。あ、ちなみに僕は上記のスケジュールのサイクルを一ヶ月続けたため貧血で倒れました。それほどまでに大変な業務であるにも関わらず、この業界の仕事や経験っていうのは社会的にさほど高く評価されていません。


アニメの制作進行から学ぶ、危機管理/危機予測の鍛え方 - かくいう私も青二才でね

 

このブログ記事には「制作進行」の経験を通じて、自分の危機管理を学べ!と書かれています。
先ほどからこのブログで述べてきた通り、アニメ業界における「制作」は、高度なヒューマンスキルが求められる業務であります。制作担当は原画、動画、処理(原画、動画の色付けなどの事)背景、素材撮影、映像編集、音声、録音、音声と映像の合成など各分野の締め切りを全部把握したうえで、数十人のスタッフたちと連携を取らなくてはいけません。各セクション間の潤滑油になって動くには高いコミュニケーション能力、交渉力、制作業務の先の先を見通せる想像力、臨機応変に動くための判断力などが重要であり、これらの能力を駆使するアニメ業界の仕事は数多くの業界を渡り歩いてきた僕の経験を振り返っても、かなりハードでした。

だけど。こんなにもハードなアニメ業界の経験は他業種でも活かせるものは多いのに、その経験はハッキリいって他の業種の人には評価されません。アニメ業界を辞めた時、別の業界へ進むべく履歴書を書いても会社の面接に進めたという事が圧倒的に低かったのです。こんだけハードな仕事をしてきたんだからどこかで評価されるだろう!というのは僕の甘い考えでした。

たぶん理由は、アニメ業界に対しての先入観や偏見などが強いからでは?と僕は考えています。アニメの業務はやたらキツイっていうイメージが広く認知されているけど、同時に「オタクっぽい」という印象も強い。皆さんはどうでしょう?アニメ業界に勤めているっていう人がいたら「オタク」っていうイメージをその人に抱きませんか?もしかしたら時代も変わっており、そのイメージも昔ほど強くないかもしれません。ただ10年近く前はアニメ業界勤務の経験が再就職に不利に働いているのではと思わざるを得ないことが何度もありました。まぁもっとも僕の能力が低かったため履歴書を読んだ会社の採用担当が業務云々ではなく、僕に魅力を感じてなかっただけかもしれませんけど。

 

もしもSHIROBAKO」や「ハケンアニメ」などの物語を見て、「私もアニメ業界に就職したい!」と思っている子が僕の身内にいたら、僕は全力で止めます。人生を棒に振るな。アニメは作るものじゃなくて、観るだけのものにしておきなさい、と。淋しい話だけどもね。

それでもアニメ業界で働きたい!という人のために制作会社選びのポイントを紹介。

arrow1953.hatenablog.com

  


 

 

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news.nicovideo.jp

海外の留学生に頼って人材の確保。もう、介護業界の実態に近くなっているんだな。 

※アニメ業界自体が本気で問題改善を行わないのに、こういった物語で「夢」だけを煽るのって犯罪だと思うんだけどね。現在のアニメ業界、多少は変わっているのかなぁ。