サブカル 語る。

サブカルチャーなどについての雑談

歴代プリキュアの中で「キュアエール」のみが持つ強さ

こんにちは。

 毎週家族揃って観ている「HUGっと!プリキュア」。プリキュア15周年と相まって、公開前から話題性の高かった映画「 HUGっと!プリキュアふたりはプリキュア オールスターズ」を昨日、娘と妻とで観てきました。

 

 

フェミニズムから生まれたプリキュア

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©2018 映画HUGっと!プリキュア製作委員会
©ABC-A・東映アニメーション

http://www.precure-movie.com

 作品の感想についてはネタバレを書いて、人の楽しみを奪うのも野暮なので、本日のブログではこの作品をずっと見続けているお父さんファンという立場から考えた「HUGっと!プリキュア論」を書いてみたく思います。

 

女の子も暴れたい!から始まったプリキュア 

 さて本題。このプリキュアという作品は最初の「ふたりはプリキュア」以来、ずっとプロデューサーを務めている「鷲尾 天(わしお たかし)」さんによると「女の子も暴れたい」という発案から生まれたものだそうな。

 

news.livedoor.com

以下、記事引用

プロデューサーが交代する時期に、これまでと違うテイストのアニメをできないかというので、私が出した企画がプリキュアでした。企画書に「女の子だって暴れたい」という一文を入れました。最初の発想は、自分が子どもの頃に好きだったキカイダーハカイダーが協力して戦ったらカッコいいだろうな、その女の子版をやってみたいな、というあたりだったんです。

ーバディもので、アクションをやりたかったのですね。

あの頃は、女の子向けでアクションはほとんどなかった。でもやっぱり、カッコいいとか、憧れがあるだろうなって。女の子も仮面ライダーや戦隊ヒーローを観ているようだし、やってみてもいいんじゃないかと。男の子だから、女の子だから、という垣根をなくしたいというのは、当時『ドラゴンボールZ』や『金田一少年の事件簿』などを担当していた西尾(大介)監督に声をかけたときに、最初にお互いに一致した部分でもあったんですよ。

  

 そしてそのアイディアから企画を発案させた鷲尾プロデューサーは、作品のシリーズ監督との打ち合わせで「ジェンダーロール」という考え方に触れます。

 

ー第1作『ふたりはプリキュア』のときは、西尾大介シリーズディレクターと二人三脚で、そもそもプリキュアをどんな内容にしていくか、議論を重ねていったんですね。 

 ジェンダーの概念も、私は西尾さんから聞いたくらいだったんです。西尾さんはずっとそういうことを考えていた方で、彼の説明を聞いて落とし込んでいった部分もたくさんありました。

ー西尾さんの説明とは?

 たとえば、「王子様はやめようね」と。「誰かが助けに来てくれる、それが男性である」というストーリーはやめようと話していたんです。男性のほうが上位概念だから、そこに助けを求めるものだというイメージはつけたくない。そうじゃなくて、自分たちの力できちんと解決したほうがカッコいいよ、って。プリキュアが成立するために必要なことは、自分の足で立っていること。女の子が凛々しくあることが、最初の番組コンセプトでした。

 

 こんなふうにプリキュアとは「女の子は守られるものである」というジェンダーロールを乗り越え、自分の足で歩ける女の子の活躍を描こうというフェミニズム的な発想から生まれた作品だったのです。

 

 ただ今回の「HUGっと!プリキュア」の製作が発表された時、テーマは「子育て」という情報から僕は最初この作品を軽視していました。

この「HUGっと!プリキュア」のメインテーマとは「子どもを守るお母さん」。物語をカンタンに説明すると大人の女性に憧れる中学2年生の転校生少女「野乃はな」がある日、いきなり空から降ってきた赤ちゃん「はぐたん」と、世話係のハムスターみたいな妖精「ハリー」に遭遇。その「はぐたん」の持つ不思議なアイテムを狙う組織と戦うために、はなはプリキュアに変身できる力を得る。はなは組織の放つ怪物と戦いながら「はぐたん」の子育てにも励むというものになるそうな。

HUGっと!プリキュア以前にあった、嘗ての子育てアニメを振り返る - サブカル 語る。

mantan-web.jp

 

 子どもを守るお母さんがテーマって、ずいぶん最初のテーマとかけ離れたな、というのが最初の印象。そして、今作プリキュアで中心的な役を担う「野乃はな」の夢が「イケてるお姉さん」になることだというのも抽象的でステレオタイプなイメージだったため「コレは駄作だ」と思っていました。ただ、娘は小さいのでそんなことを考えないだろうということを思いながらも「まぁ、とりあえずは作品を見るか」と第一話を視聴。その時は特に何も感じませんでしたが、その数ヶ月後。DVDで録画していた一話を娘が見ていた時、初めてのプリキュア変身場面で野乃はなが発したセリフの持つ「力強さ」に気づいたのですす。

 

歴代のプリキュア変身の中で、初めて叫んだ「自我」 

 プリキュアのシリーズは原則的に「異世界から妖精とその妖精を追って怪物が人間のいる世界にやってくる。その騒ぎに巻き込まれた女の子が怪物の手で壊される街、怪物に襲われる妖精や友人、または奪われようとする自分の大切なもの(友だちとの思い出の品など)のピンチを見過ごせず、妖精から力をもらってプリキュアに変身!っていう物語構成になっています。このHUGっと!プリキュアでも歴代のフォーマットを踏襲して、未来からやってきた赤ちゃん「はぐたん」を狙って人間世界で暴れる怪物「オシマイダー」に立ち向かうためプリキュアの変身能力を得るのですがその時、はなは怪物に向かってこう叫びます。

 

「ここで逃げたらカッコ悪い!そんなの、私がなりたい野乃はなじゃない!」 

 

 つまり、はなは怪物から街やはぐたんを守るためだけではなく、こうありたいと考え自分。言い換えると自分自身の生き方、在り方という「自我」そのものを守るため立ち上がるのです。ここまで明確に自我を守るため戦うプリキュアって、ひょっとしたらこの作品が最初じゃないか?と思った僕は初代プリキュアから、HUGっと!プリキュアまで歴代プリキュアの第1話(とくに最初の変身)を全部確認してみたところ「自分の在り方」を守るため戦うことをこんなに明確に言及したプリキュアは、この野乃はなが変身する「キュアエール」だけでした。

※諦めない自分を守る!プリンセスになる夢を守る!という類似のセリフを叫ぶ作品もあるけど、はなと比べると 「自我」が弱い印象です。

 

 そして野乃はなはプリキュアになった後も自分を含め、他人の生き方を決める「自我」について並々ならぬこだわりを見せます。ではその野乃はなのこうありたいと思う自分(自我)=イケてるお姉さん像とはいったい何なのか?

www.huffingtonpost.jp

 

 

"「はぐプリ」は、中学生の女の子・野乃はな達が、不思議な赤ちゃん「はぐたん」を守るため、そして世界の未来を守るために、伝説の戦士「プリキュア」に変身して悪に立ち向かっていくストーリーだ。そんな「はぐプリ」の19話(6月10日放送)でのキャラクターの発言が、Twitter上で「ジェンダーに切り込んでいる」と反響を呼んでいる。(中略) 19話では、主人公・野乃はなの妹の同級生・愛崎えみるが、新進気鋭のデザイナー吉見リタ氏からギターの腕を買われてファッションショー出演のオファーを受けるところから始まる。ショーのテーマは「女の子もヒーローになれる!」だ。

 えみるは、ヒーローに憧れる、エレキギターが好きな女の子。だが、いまいち自分に自信が持てず、心配性も相まってオファーを受けることを渋っていた。ギターも兄・正人に「女の子らしくないし、家風に合わない」と反対されている。そして正人は、同じくファッションショーでモデルを務める同級生の男子、若宮アンリにも、敵意を向けていた。アニメの中ではネクタイをリボンのように結んでいたアンリに向かって「女子みたいだよ、君の格好。男子の中で浮いているのが心配なんだ」とからかい、ショーのテーマに反発して、えみるに「自分の考える理想の女子像」を押し付ける"

5人戦隊モノの特撮で、今までレッドを女性が務めていないのがこの国の限界 - サブカル 語る。

  この時には自分の勝手な価値観を妹や同級生に押し付ける男子に「誰にもヒーローはいる!人の心を縛るな!」とはなは怒鳴りつけます。さらにはプリキュア打倒失敗から「俺はここぞという時に頑張れない!何の才能もない!」と、自分の情けなさや弱さを嘆き、プリキュアに怯える敵にもとどめを刺さず「違う。コレは私のなりたいプリキュアじゃない!」と、最初の時のように「なりたい自分」についてのこだわりを叫び、「私にも頑張れない時がある。だけどあなたにも未来はある」と、敵の弱さに寄り添い優しく声をかけます。

 

 このことから野乃はなのなりたいイケてるお姉さんというのは「他人の痛みに寄り添える感受性や優しさと、時には自分や他人の人生や生き方を否定する圧力に堂々と立ち向かう強さを持った女性」となり、その逆にいる大人というのはカッコ悪く尊敬にも値しない人物となります。

 

プリキュアの目指す、フェミニズムの先

 女の子も男の子と同じように戦いたいとの発想からスタートしたプリキュアは15年を経て、女の子が凛々しく自分で立つだけではなく「自分と他人の生き方」を尊重して、男女の違いや敵味方を越えて共に未来を歩もう!と訴える強さを持つキュアエール誕生に繋がったといえるのではないか。物語もそろそろ佳境に入るころですが、この「HUGっと!プリキュア」以降の作品がこの先どんな進化を遂げるかに興味を持っている反面、キュアエールたちにも強く愛着を抱く僕はもう少し彼女たちの活躍を見ていたいという二律背反に悩む今日、この頃です。いずれにしても、女の子対象のバトルものアニメから性別、種族を越える「人生そのものの応援歌」に成長を遂げたという点において、このHUGっと!プリキュアは歴代の中でも高く評価されるべき。

 

補足:記事を読んでプリキュアに興味を持った人は以下のサイト参照。簡単に物語のポイント押さえられるだけでなく、おさらいもできるので便利!

 

www.animatetimes.com

 

 

 

arrow1953.hatenablog.com

 

  この間、驚きの展開でエピローグとなった「HUGっと!プリキュア」まとめ感想。